
青年ニコの最高にツイてない1日、
街でちょっと奇妙な人たちと出遭う物語。
街でちょっと奇妙な人たちと出遭う物語。
こんにちは、Keinaです。
最近、新作映画試写会の招待ハガキが、ありがたいことに箱庭編集部へ続々と届いております。
その中から、気になった映画「コーヒーをめぐる冒険」の試写会へ行ってきたのですが、なんとも面白かったのでご紹介!
2014年3月1日(土)より渋谷シアター・イメージフォーラムにて全国順次公開
【STORY】
2年前に大学を辞めたことを父に秘密にしたまま、"考える"日々を送っている青年ニコ。
恋人の家でコーヒーを飲みそこねた朝、車の免許が停止になった。
アパートでは上階に住むオヤジに絡まれ、気分直しに親友マッツェと出かけることに。
すると、クサい芝居の売れっ子俳優、ニコに片想いしていた同級生ユリカ、ナチス政権下を生き抜いた老人等々、
ニコの行く先々でひとクセある人たちが次々と現れる。
果たして、ニコのツイてない1日の幕切れは──?

この映画で、まず新鮮だな!と思ったところは、シャープなモノクロ映像!
モノクロ映画を見たのは、いつ以来だろうか。かなり久しぶりでした。
シャープなモノクロ映像で捉えられたベルリンの街も本作の重要な要素のひとつ。
街のシンボルでもあるテレビ塔、かつて東西を隔てたフリードリヒ通りと壁跡、サブカルチャーの聖地"タヘレス"などが登場し、
そこかしこに歴史が生き、過去と現在が交錯する、真実のベルリンをニコとともに体感できる。
映像のひとつひとつが、まるで写真作品のように美しいので、ホッとひと息つきたいときにオススメの映画。
そして、青年ニコが生きる目標を見失って人生一時停止中の姿、ツイていない1日、奇妙な人との出逢いは、
いつかの自分と重なってしまうような、エピソードばかり。
恋人との別れからはじまり、ニコはさまざまな人たちと出会い、すれ違う。
そして、コーヒーを飲もうとするたび、飲みそこねる。
そんな"すれ違い"が織り成すユニークな物語。

総勢20名のニコが出遭うひとクセある人たちも魅力。
印象に残ったのは、まず主人公のニコ(トム・シリング)。
イケメンだけど、少し小柄で、自信なさげな表情がいい。
なかなか踏み出せない頼りないタイプだけど、案外優しいところあり、憎めないキャラクター。
友人マッチェ(マルク・ホーゼマン)
自称俳優だけど、出演作ゼロという面白い人物。
少し変人っぽく、危なげだけど、人間くさいところもある。言動やリアクションについつい見入ってしまいました。
なにげに好きなキャラクター。
同級生ユリカ(フリデリーケ・ケンプター)
肥満児だったユリカはダイエットに成功、別人のようになっていて、かつてニコに片想いしていたことを告白する。
今は、キレイなのに過去の自分にこだわり続ける姿が悲しげ。外見が変わっても、意外と心まではなかなか変わらない。
ユリカの前衛演劇は、私もついつい笑ってしまいました。
マルセルのおばあちゃん(リス・ボットナー)
ヤクを売りさばく少年の耳の遠い祖母。
設定がすごいけど、ニコとおばあちゃんのゆったりした時間が好き。
自分のおばあちゃんとの時間を思い出し、ほっこりしました。
老人フリードリヒ(ミヒャエル・グヴィスデク)
コーヒーマシンを洗ってしまったバーで、ナチス政権下を生き抜いた老人、フリードリヒに話しかけられる。
ただの面倒くさい酔っ払い老人かと思いきや、そうではない何かがある。最後の展開も驚きです。
法律を学んでいたが何だかイヤになり、生きる目標を見失って、ただ今・人生・一時停止中のニコ。
これは、そんなニコに少し揺さぶりをかける、ある1日の物語。
どこか普通じゃない人たちと出遭い、ちょっと奇妙な出来事を通り抜けたことで、
喜び、傷つき、戸惑いながらも、次の道へと続く扉が、ぼんやりと見えてくる。
誰にでも身に覚えのある、何をすれば良いのか分からない不安な時期と、
そこから抜け出す瞬間が、力の抜けたユーモアにアイロニーがピリッときいたタッチで繊細に描かれる。
「大丈夫、また歩き出せる」という安堵感と未来への可能性が、ニコと私たちを励ましてくれる。
少し苦いけれど心まで温めてくれる、一杯のコーヒーのような映画です。
ニコが行く先々で、とことんコーヒーを飲みそこねるので、見ていて無性にコーヒーが飲みたくなります。
映画を観終わったあと、ニコの気持ちで、おいしいコーヒーをじっくり味わってみてください。最高の気分が味わえるはず。
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コーヒーをめぐる冒険 [公式サイト] http://www.cetera.co.jp/coffee/ [監督・脚本] ヤン・オーレ・ゲルスター [音楽] ザ・メジャー・マイナーズ/シェリリン・マクニール [出演] トム・シリング『素粒子』/ [原題] OH BOY/2012年/ドイツ/85分/ドイツ語/モノクロ [日本語字幕] 吉川美奈子 [協力] Goethe-Insutitut Tokyo東京ドイツ文化センター [配給・宣伝] セテラ・インターナショナル/宣伝協力:Lem © 2012 Schiwago Film GmbH, Chromosom Filmproduktion, HR, arte All rights reserved |
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