
"コンテを描いたり想像するより、まずやってみる"
大胆な発想から生まれる「陶磁器」の新たな可能性
こんにちは、箱庭特派員のmayaです!
気がつけば梅雨が明け、夏が始まっていました。
今回はまだ梅雨まっ只中だった6月初旬のお話。
私はある人を訪ねて、ぶらり横浜周辺へ行ってきました。
彼女は、陶磁器作家の塚崎愛(つかざきめぐみ)さん。
毎年GWに青山のspiralで開催される若手クリエイターが集う公募展
に出展している、注目のクリエイターさんなのです。
「陶芸」と聞くと、大きな窯や広い工房が浮かびますよね。
でも彼女が普通の陶芸家や職人さんと少し違うのは、
制作の全工程をアパートの一室で行っているというところ。
7畳ほどの部屋の隅っこには、小さな窯とろくろ。
その小さな空間こそが、彼女の"アトリエ"なんです。
何だか拍子抜けしませんか?陶芸のイメージ、変わりませんか?
大きな窯はない。広い工房もない。けどモノづくりはできる。
「これが私流の陶芸スタイルなんです(笑)」と笑う塚崎さんを見て
このコンパクト感が今の時代やライフスタイルに
すごくマッチしているなぁと、しみじみ思ったのでした。

実は、大学卒業後はお菓子メーカーに勤めていたというめぐみさん。
ですが、昔から密かに抱いていたモノづくりへの道を諦められず
思い切って会社を辞めて、陶芸の道に飛び込んだのだとか。
その後学校で陶芸を学び、現在は陶磁器作家として活動されています。
大人になると、何かを捨てて新境地に飛び込むのは不安ですよね。
だけどめぐみさんの表情を見ていると本当に楽しそうで
見ているこっちまで思わずふっと表情が緩んでしまうのです。
"楽しむ"というのは、簡単そうで、実は意外と難しいものですよね。

陶磁器作家と言いながら、
実は今まであまり"器"は作ってこなかったという彼女。
ちなみにこの写真も、一見器のように見えるんですが
あくまでも部品の一部だそうで(これが何になるかは秘密!)
主な作品は造形物がメインです。

photo by kohei fukushima
例えば、学校の卒業制作として作った『水跡』というこちらの作品。
実物を見せてくれるというので、お願いしたら
押し入れの中から、本マグロが入っていそうな(笑)発泡スチロールの箱が登場!
箱の中にこれがやっぱり本マグロのようにドーンと入っていたのですが
50cmくらい?いやもっと?とにかく大きくて、存在感がありました。
上からシロップのように垂れているのは、釉薬(ゆうやく)というガラス質。
焼く前に上の部分に乗せ(窯に入れる前は固まりなんですって)
それが熱で溶けることによって、1本の美しい線が生まれるのだそう。
でもこの「1本だけまっすぐ垂らす」というのが実は非常に難しく
何度も何度も作り直したのだとか。
「焼いてみないと、どうなるかわからないんですよ。
この量だったらこれくらい垂れるかなぁって一応イメージしますけど、
正直なかなか思った通りにはいかない。だから絵コンテは超ラフです。
焼く前は良くても焼いてみたら全然ダメ...なんてこと日常茶飯事なので。
だからコンテを描くよりイメージするよりも、とにかくやってみる。
ってかっこいいこと言ったけど...単純に絵が苦手なんですよね(笑)」


photo by kohei fukushima
アクセサリーを飾る什器として使われている作品です。
真ん中のガラス質も釉薬(ゆうやく)を焼いたもの。何だかタルトみたい。
実は、私もKITTEで実物を見ました。
釉薬の透明感とアクセサリーの相性がとっても素敵なんです!

陶磁器の素材である粘度や釉薬は、なかなか都内では購入が難しいため
普段はネットで買うことが多いそう。
部屋の隅っこには、段ボールに入った粘度が積み重なっていましたよ。

愛さんの部屋でお話を伺っていたら
何とお母様から冷たい麦茶とワッフルの差し入れが!
まるで友達の家に遊びにきたような懐かしい感覚が蘇りました(笑)
簾がかかった窓の外からは、子供たちの声が聞こえてきて
なんだかとってものほほんとした空間。
その小さなアトリエ空間でもくもくと作品をつくる姿が印象的でした。

※来月千駄木のギャラリーで展示イベントを開催!
【イベント名】HACOTEN
【開催場所】ギャラリーKINGYO
【住所】東京都文京区千駄木2-49-10(株)SD602
【日時】8/26(火)〜9/4(木)12:00-19:00(金曜は20:00まで/最終日は17:00終了)
【休廊日】9/1(月)