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普通の絵画ではNGとされるデコボコや色ムラが、逆に「魅力」として表現できるのが木版の魅力です。

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彦坂木版工房
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彦坂木版工房(ひこさかもくはんこうぼう)

2010年から彦坂有紀<ひこさかゆき>さん(写真左)、もりといずみさん(写真右)の2人で活動を行っている木版工房。日本の伝統工芸である「浮世絵」を広めるために、全国を回り木版画作品の展示やワークショップ、オリジナルグッズ制作、雑誌&書籍の装丁イラスト、出版物の発行など幅広く活躍中。また、食べ物を中心とした木版画のイラストや、名刺やポスターなどのデザインから木版印刷まで行うオーダーサービスも行なっている。

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彦坂木版工房


展示会「ルヴァン展」
(名古屋8/6~9/1、京都9/12~9/15、長野10/4~10/13) 作品集「YASAI BOOK」 装丁イラスト「日本全国パンの聖地を旅する パン欲」(著書:池田浩明)、「まるまるの毬」(著書:西條奈加)、雑誌「Hanako」(No.1063)他

【LINK】
WEBサイト
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箱庭(以下 : h):今年初めに出版された本
「YASAI BOOK」ですが、
なぜ今回はパンではなく野菜をモチーフに?

彦坂さん(以下:彦):基本的にパンは茶色いので、展示をした時に全体が茶色っぽくなるじゃないですか。それはそれで好きなんですけど、何か他にないかとふと考えたときに、野菜をモチーフにしてみたらどうかなと。野菜は色も形も大きさも、質感もさまざまで、それぞれに個性があって面白そうだと感じたんです。でも、その個性を表現するのに、最初はかなり苦戦しましたね。特に、ナスやトマトの光沢感を表現するのは、木版の性質上とても大変でした。

もりとさん(以下:も):ちなみに、野菜の木版もすべて実物大で描いて刷っているんですよ。野菜を買ってきたら、まず大きさを測ってから下書きをします。リアリティを感じてもらいたいので、大きい野菜はどーんと大きく、小さい野菜はかわいらしく小さく刷ります。だから、ごぼうとかネギとかは、まるで掛け軸みたいになりますよ(笑)。
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彦坂木版工房
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彦坂木版工房

h:そうだったんですね!木版ならではの難しさって他にもありますか?

も:そうですね。一番難しいと思う瞬間は、実際に刷ってみたら想像と全く違ったとき。出来てみないとわからない、というところでしょうか。木版は1枚彫るのに時間もかかるし、だめだったら木も無駄になってしまいますから。だから、僕たちは最初にサンプルを作るようにしています。刷るものの全体図から一部分だけを切り取って、小さめの木版で試し刷りをして...。ポイントは、水の量が多いか少ないかと、刷るときの力加減です。あと、普段は紙を濡れた新聞紙に挟んで湿らせてから刷りますが、乾いた状態のまま刷ることもあります。濡れた紙に刷った場合は、絵の具がにじむのでしっとり感がでて、乾いた紙に刷った場合は、サクサク感がでます。例えば、あんぱんは濡れた紙に刷って、しっとり感を。逆にクロワッサンは、乾いた紙に刷ってあのサクサク感を。という風に、モチーフに合わせてできるだけ本物に近づける方法を考えています。

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彦坂木版工房
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h:木版と言っても色んな手法があるんですね。ぜひ一度見てみたい!お2人は実際に各地でワークショップも開催されていますよね。

彦:はい。私、作品を飾って画廊やギャラリーに1人で立っているのが、あまり好きではなくて。お客さんとの距離も遠く感じて、気まずい感じがあるじゃないですか。でも、ワークショップだったらもっと木版を身近に感じてもらえるし、お客さんと近い距離で話せるなと思って。最初は、彫ってある木版を持っていき、その場でその木版を使い、刷るというかたちでやっていました。今は下絵をこちらで用意して、実際にそれを木版に写し彫って、刷るまで全部やってもらっています。皆さんすごく上手なんですよ!

h:今後、他に挑戦したいことや、やってみたいことはありますか?

も:木版市(もくはんいち)ですね。様々な展示をしてきましたが、本当はすべて僕たちが行っている木版の普及活動の一環なんです。実際に僕も、彼女のパンの画を見て「これ版画なの!?」と衝撃を受けた1人ですが、もっと多くの人にもその驚きを感じてほしい。木版の新しい世界を知ってもらえるキッカケになればいいなと思って活動しています。日本には、私たち以外にも、色んな木版作品を作っている人たちがいるんですよ。それで、その人たちと一緒に、木版画のお祭りみたいなものをやれたらいいなと思っています。実はもう計画は進んでいて、今年の11月頃に京都の恵文社で予定しています。展示やワークショップ中心に、木版画の新たな可能性を提示できるものにしたいですね。

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彦坂木版工房
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彦坂木版工房








彦:あとは、木版画に欠かせない彫刻刀を置いたりね。実際に、彫刻刀のメーカーさんに来てもらって、研ぎ方のワークショップをしてもらったりする予定です。そうやって、さらに木版のよさを知ってもらえるように普及活動をしていくことが、今後の目標ですね。

h:ずばり、「木版の魅力」って何でしょうか?

彦:普通の絵と違い、紙のでこぼこや色ムラが逆に作品の魅力として表現されるのがいいですね。水彩画のように、紙に直接描くものだと、どうしても筆の跡が残ったりして、リアルさに少し欠けちゃうときがあります。「これ、絵なんだな」と思わせてしまうというか。でも木版は、描いている跡みたいなものがないんですよね。絵だと思って見ていても、その跡がないだけで、どこか本物らしさを感じるんですよ。「ふわふわしていて、柔らかくて、温かくて、甘そうだな」って、見る側が自由に想像できる。

も:パンだけじゃなくて、このクリームソーダみたいに炭酸のシュワシュワ感も、木版で表現できるんです。あと、よく見ると分かるんですけど、中に入っている氷がうっすら見えたり。これを見た人が思わず「ソーダ飲みたいな~」と思ってもらえるような、そんな作品をこれからも作っていけたらいいなと思います。
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