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「生誕120年記念 デザイナー芹沢銈介の世界展」レポートの巻

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画家、デザイナー、染色家、蒐集家、
4つの側面を持つ芹沢銈介の世界。

こんにちは。Keinaです。
先日、モノコト採集の記事でご紹介していた「生誕120年記念デザイナー芹沢銈介の世界展」の
オープニングセレモニーへ行ってきたので、レポートしてみたいと思います!

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会場は、日本橋髙島屋ということで、
東京メトロ日本橋駅で下車し、B2出口を目指して歩いていくと、芹沢さんの展示と民藝展の飾りが見えてきました。

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実は、私の母は中学の頃から芹沢銈介さんが大好きだったようで、最近、芹沢さんのことを教えてもらったところでした。個人的にも数年前から、芹沢銈介さんのもとに弟子入りした柚木沙弥郎が好きだったのですが、師匠の芹沢さんの作品を見るのは実は初めてで、この展示をとても楽しみにしていました。

階段を登ってお店の前のショーウィンドウを見た瞬間、一気に気持ちが明るく華やかになりました。
芹沢さんの「いろは文六曲屏風」を大きくプリントしたものがお出迎えしてくれました。
足をとめて、見ている方も多く、わたしもその一人でした。

会場は、日本橋髙島屋8階ホールです。

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オープニングセレモニーにご招待いただき、展示のはじまる瞬間に立ち会いました。
挨拶からはじまり、テープカットが行われました。

写真中央の方は、芹沢銈介さんの長男の妻、東北福祉大学芹沢銈介美術工芸館副館長、芹沢恵子さん。
左の男性は、株式会社 高島屋 執行役員 日本橋店長 亀岡恒方さん。
右の女性は、この展示を主催している朝日新聞社 企画事業本部 文化事業部長 堀越礼子さん。

この日の来賓者として、監修 共立女子大学教授 長崎 巌さん、日本民藝館 館長 深澤直人さん、
柏市教育委員会生涯学習部文化課課長 小宮山勉さんもいらっしゃいました。

普段はお会いできないような素晴らしい方々ばかりで、緊張しました。

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恵子さんのお礼のご挨拶が、心に沁みました。お話の一部をご紹介します。

「感激で胸がいっぱいになっております。お話をいただいてからまもなく2年くらいになります。頼りになる主人が今は亡く、ちょっとお引き受けするのに不安もありましたけれど、やっぱり、これはお引き受けしなければいけないと思って覚悟を決めて展覧会を開催することに決めました。そして、お引き受けしたからには、父や主人に喜んでもらえるような展覧会にしようと覚悟をしました。そして、今日に至りましたけれど、本当に大勢の方のお力があったということをつくづく思います。ここで、心からみなさんに厚くお礼申しあげます。」

なんと、イベント終了後には、芹沢恵子さんに直接お話しを伺うことができました。


箱庭(以下:h):芹沢銈介さんは、毎日の暮らしの中で民藝品をどのようにとりいれていらっしゃいましたか?
芹沢恵子さん(以下:芹):家具とか、食器とかそういうものを日常的に使ってましたよ。

コレクターとして有名ですけど、コレクションの一部を使っていました。
敷物とか直接敷いて、飾っておかないで実際に使っていました。

h:集めているもの、身の回りにあるものが、すでに民藝品なんですね!
芹:本当にそうですね。

h:作品をつくるために、たとえばスケッチしたり、アイデアをノートに書きためていましたか?
芹:それは、してましたね。
スケッチをするっていうのは、本当によく知られていることで、
なんでも目についたものをどんどんスケッチしていましたよ。

こうやって一緒にお茶なんか飲んでいても、果物が出ていると、
その果物を広告の裏やそこにある紙にスケッチをしていました。
スケッチの力っていうのはすごかったです。

h:芹沢さんが作品をつくりだすとき、取り掛かるまでに時間はかかりましたか。
芹:たくさんあるスケッチの中から、自分が選んだものを作品に使っていましたね。
そばで見ていて、そんなに苦労して仕事しているって思えなかったです。

h:次から次へとアイデアがわいてくる感じですか?
芹:そうですね。どうしてそんなに模様が湧いてくるのかなって思ってました。

h:様々な作品を見たり、集めたり、インプットも多いので、アウトプットも多かったのでしょうか。
芹:たくさん体に入っているから、何かの時にパッと出るんでしょうね。

h:日本や海外にも足を運んでいたそうですが、旅は好きでしたか?
芹:旅行することは好きだったと思うんですけど、海外は70歳すぎてから、ようやく行けたんですよ。
その前にパリとかフランス、イタリアとか行きたかったけど、
やっぱり仕事のこともあるし、経済的なこともあって、出られなかったけど、
71歳から、ようやく色んなところ行けるようになりましたね。
それからは、頻繁じゃないけど、外国で展覧会もあったし、パリで大規模な個展もありました。

h:芹沢銈介さんは、これからの日本の民藝が、どのようになっていってほしいと思い、生きていらしたと思いますか。
芹:みんなに使ってもらいたいっていうのが、最大の気持ちだと思いますね。
そのために自分の作品もみんなの手に行き渡るように、芹沢染紙研究所で量産できるようになりました。
作品は一点しかできませんけど、そこの工房で若い人たちが父の指導で仕事してると、
例えばテーブルセンターとかそういうものなどお安く手に入るようになりますよね。
そういう風に、みんなに使ってもらいたいっていうように思っていたと思います。

h:恵子さん、貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました!

お話を伺ったあと、ものづくりしたい気持ちが沸々と湧いてきました!
その気持ちのまま、芹沢銈介さんの展示を見てまわりました。

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生誕120年記念 デザイナー芹沢銈介の世界展
2014年 9月10日(水)~9月23日(火・祝) 日本橋髙島屋 8階ホール
主催:朝日新聞社、東北福祉大学芹沢銈介美術工芸館
協力:静岡市立芹沢銈介美術館、日本民藝館、柏市
監修:長崎 巌(共立女子大学 教授)、芹沢惠子(東北福祉大学 芹沢銈介美術工芸館 副館長)

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この展示で気になったものを、一部紹介してみたいと思います。

第1部「デザイナー芹沢銈介~多彩な造形表現」

1. 文字と遊ぶ
芹沢銈介さんの作品の中でもひときわ目をひく、文字を意匠化した作品が並んでいます。

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『いろは文六曲屏風』
文字をデザイン化した芹沢さんの代表作。それぞれの文字から始まる図柄を配置しています。
色も文字の形も図柄も、なんとも勢いがあり大好きな作品です。

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『いろは文着物』
この模様からは、遊び心が溢れてますね。

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『工藝』 帙(6)・61-72号
昭和 6年(1931年)雑誌「工藝」が創刊され、表紙を型染で担当。

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雑誌の表紙に型染の布を用いた斬新な手法は注目と賞賛を集めたそうです。
現在、このようにていねいに作られた雑誌があったら、ぜひ読んでみたいところです。

文字と遊んだ作品は、漢字やひらがなが踊りだすような勢いがあり、ワクワクしました。
タイポグラフィ、グラフィックデザインの要素もたくさん感じられ、見ていてとても刺激的でした。


2. 伝統の中の新しさ
芹沢銈介さんの作品の多くは、植物を中心とする伝統的なモチーフです。
しかし伝統にとらわれない新しさをもった瑞々しい表現で表されています。
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左『鯛泳ぐ文着物』、右『松文壁掛』。
ふたつとも大胆に配置された図案が、なんとも印象的です。

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『松文壁掛』は、とても好みの模様で、マリメッコを彷彿させるようなモダンな図案。
この柄のワンピースがあったら欲しいくらい好きです。

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おめでたい鯛がシンメトリーに配置された『鯛泳ぐ文着物』も迫力があって好きです。

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完成した作品も素敵ですが、『型紙 鯛泳ぐ文』など、いくつか型紙も展示してあり、
その繊細な仕事ぶりを間近で見ることもできました。

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『型紙 ばんどり図』を近づいて見てみると、模様の細かさにクラクラします。

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型染めは日本の伝統的な染色技法のひとつで、江戸時代に庶民の浴衣の染色技法として発展したそうです。
通常はデザイン、型彫り、染と分業していたそうですが、芹沢さんは全行程をすべて一人で行っていたそうです。

どのように作っていたのか、とても気になりますね。
そう思っていたところ、展示の途中に映像が見れるコーナーがあり、制作風景の映像が見れました。

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『黍文着物』

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『立木文着物』


3. 琉球への思い
芹沢銈介さんは、柳宗悦さんの提唱する民藝の思想と出会い、
沖縄の紅型の色づかいに大きな衝撃を受けたといわれています。
その想いは、作品にもあらわれていました。
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左上『山に草花文小襖』、左下『貝文小襖』、右上『小川紙漉軸』、右下『草花文赤絵大鉢』。


4. 斬新な試み
デザイナー芹沢銈介の真骨頂ともいえる、斬新なデザイン。
さまざまな幾何形体や抽象的な形で構成される作品群は、モチーフの形にこだわったものや、
その配列、構成にこだわったもの、また形と配色にこだわったものなど、実に多彩です。
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『型絵染筆彩着物』
遠くで見ていると、ぼんやり鮮やかに滲む模様が綺麗だなと思っていたんですが、近づいてみると、
なんんと大きな模様の隙間に、三角や四角など、とても細かい模様が描かれていました。
年代やデザインを超えて、今見ても新しく斬新な模様に驚かされました!

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『破れ格子文着物』
この着物は、80代に制作したもので、最小限の型で深い内容を示した作品ひとつです。
シンプルなのに、とてもかっこいいですね。

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こちらは、恵子さんの大学卒業時の論文に、芹沢さんがデザインした染紙を使い装幀まで手がけてくれたという『修士論文帙』。このエピソードからも、とても優しい方だったのが、伝わってきますね。

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『ロートレック』 式場隆三郎著の装幀


第2部「芹沢銈介の目~収集した世界各国の美術・工芸品」
第二部では、収集という行為の中で、芹沢銈介が心揺さぶられ、内なる美意識を刺激されたであろう
日本を含む世界各国の美術・工芸品を紹介しています。
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力強いものから、エネルギーが溢れだすようなものまでありました。
わたしも日本や海外など様々な工芸品を集めるのが好きなので、見ていて心躍りました。

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中でも、右奥『人物鳥獣模様丸形帽子』 ペルー、左右手前『幾何学模様角形帽子』 ペルーがお気に入りです。

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『狩人の衣装』 コートジボワール
この衣装のたくましく、美しく、力強いところが、とても気に入り、じっくり見ていました。

芹沢さんは、まるで仕事であるかのように、暇さえあればスケッチばかりしていたそうで、
結局、毎日欠かさず描くという習慣は最晩年まで継続し、
外出する際にも常に描くものを携帯し、手当たり次第に描き続けたそうです。
この徹底的に鍛えぬいた絵の力はその後の仕事の強固な基礎となっただけではなく、
その絵自体も驚くべき高い境地を示すに至った。
(生誕120年記念 デザイナー芹沢銈介の世界展 図録P148より参照)

大胆でユーモア、そして温かさが満ちたデザインがつくられるまで、積み重ねてきたもの。
それは、まさにスケッチ力が源となり、素晴らしい型染として昇華したのではないでしょうか。
染色家としてデビューした時、芹沢さんは34歳。
工芸家としては決して早いとはいえないスタートだったかもしれませんが、
物事を始めるのに遅いということはないということを同時に伝えてくれているような気がします。

展示会場の出口を出たところには、図録が販売していました。
そして、同展にあわせ、「用の美とこころ 民藝展」が開催されていました。
全国各地から選りすぐった民藝品を展示・即売する他、
現代に受け継がれる芹沢銈介デザインによる作品もたくさんありました。
おみやげにポストカードと「縄のれん文のれん」の風呂敷を購入しました。

これだけたくさんの芹沢さんの作品が一堂に見られて、
民藝品まで楽しめる機会もなかなかないので、ぜひこの機会に足を運んでみてはいかがでしょうか。

『生誕120年記念 デザイナー芹沢銈介の世界展』
日本橋髙島屋の会期終了後は、横浜、京都、大阪、仙台で開催予定です。
会期 : 2014 年 9 月 10 日(水)~ 9 月 23 日(火・祝) 会場:日本橋髙島屋 (終了)
会期 : 2014 年 9 月 25 日(木)~ 10 月 6 日(月) 会場 : 横浜髙島屋 (終了)
会期 : 2015 年 1 月 7 日(水)~ 1 月 19 日(月) 会場 : 京都髙島屋
会期 : 2015 年 1 月 21 日(水)~ 2 月 2 日(月) 会場 : 大阪髙島屋
※3 月 17 日(火)~6 月 17 日(水) 仙台・東北福祉文化大学芹沢銈介美術工芸館にて開催


美は暮らしの中にあり。柳宗悦の精神を受け継いだ人々がいた。
『用の美とこころ 民藝展』
全国各地から現代の暮らしに溶け込む民藝品を展示、販売
2014 年 9 月 10 日(水)~9 月 23 日(火・祝) 日本橋髙島屋 8 階催会場 (終了)
2014 年 9 月 25 日(木)~9 月 29 日(月) 横浜髙島屋 8 階催会場 (終了)
2015 年 1 月 7 日(水)~1 月 12 日(月) 京都髙島屋 7 階催会場
2015 年 1 月 21 日(水)~1 月 26 日(月) 大阪髙島屋 7 階催会場
※「デザイナー芹沢銈介の世界展」とは会期終了日が異なります。


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